◇ 役員に社宅等を貸したとき 担当:今村
会社が役員や社員のために、法人名義で賃貸借契約を結び
マンション等を借上げて、社宅として貸すことがあります。
たとえば、会社が家賃10万円のマンションを借りて、役員に貸すとします。
一般的に、借り受けた社宅を貸与している場合には賃料相当額の50%を
役員より徴収すれば、所得税の対象とはなりません。
①役員から家賃を徴収しない場合
役員は会社から10万円もらって、それを家賃に充てたことになります。
10万円が給与課税となります。
②家賃10万円の社宅を貸与されているが家賃を4万円しか支払っていない場合
賃料相当額10万円の50%の5万円と支払っている家賃4万円との差額、1万円が給与課税となります。
③現金支給の住宅手当や入居者が直接契約している場合
社宅の貸与とは認められないため、給与として課税されます。
ただし、貸与する社宅が小規模な住宅に該当する場合には
賃料相当額が10%~20%程度に引き下がる場合があります。
小規模な社宅の要件
小規模な社宅 | 耐用年数 30年以下 | 床面積 132㎡以下 |
耐用年数 30年超 | 床面積 99㎡以下 | |
小規模な社宅以外 | 上記以外 |
賃料相当額の計算
小規模な社宅 である場合 |
(1)から(3)の合計額が賃料相当額 (1) (その年度の建物の固定資産税の課税標準額) × 0.2% (2) 12円 × (その建物の総床面積 / 3.3㎡) (3) (その年度の敷地の固定資産税の課税標準額) × 0.22%
|
|
小規模な社宅 でない場合 |
自社所有 社宅 |
(1) (その年度の建物の固定資産税の課税標準額) × 12%※ ※ 耐用年数30年超は10% (2) (その年度の敷地の固定資産税の課税標準額) × 6% (3) {(1) + (2)} × 12分の1 |
借上社宅 |
下記のいずれか多い金額 (1) 会社が支払う賃借料の50% (2) 自社所有社宅で計算した金額 |
上図のとおり、「固定資産税の課税標準額」をもとにして社宅費にて計算することができます。
具体例を使って計算してみましょう。
前提条件は下記のとおりです。
・3LDKマンション ・床面積 90㎡ ・家賃 100,000円 ・建物の固定資産税の課税標準 8,000,000円 ・敷地の固定資産税の課税標準額 1,000,000円 |
実際に数字を入れてみると…
(1) 8,000,000円 × 0.2% = 16,000円
(2) 12円 × (90㎡/3.3㎡) = 327円
(3) 1,000,000円 × 0.22% = 2,200円
(4) (1) + (2) + (3) = 18,527円
結果として、18,527円を会社へ払えば、給与課税されません。
会社の経費として
100,000円-18,527円=81,473円
落とすことができます。
最近は、「固定資産税課税台帳閲覧制度」により、
借家人でも固定資産税の課税標準額を知ることができます。
まずは、市役所へ行き、「固定資産税の課税標準額」を調べにいきましょう。
持っていくものは、
①賃貸借契約書
②本人確認できるもの(免許証等)
③会社の代表印
実際はここまで計算している会社は少ないようです。
ひと手間加えて、会社や個人にとって一番良い方法を提案させて頂きます。
法人側の法人税の課税所得
プラスとなる要因として、家賃収入・役員報酬の減額による損金の減少
マイナスの要因は社宅家賃の負担による損金の増加
個人側の所得税の課税所得金額
プラスの要因は所得税・住民税の減少、法人負担分の家賃の減少
マイナスの要因は役員報酬の減少
まとめると、下図のとおりとなります。
マイナス要因 | プラス要因 | |
法人 | 家賃の負担 | 家賃収入・役員報酬の減額 |
個人 | 役員報酬の減額 | 所得税・住民税 家賃の減額 |
◇ 給与を支給するときの源泉所得税 担当:高野
給与計算をするときに、源泉所得税等をいくら控除してよいか迷うことはありませんか?
税務調査で間違いを指摘され、追徴されることがあるのでしっかりと計算したいものです。
■特に注意するポイントとしては次の2点があります。
① 通勤手当は所得税では課税されないので給与の額には含みません。
ただし、所得税法の「非課税限度額」を超える場合は、「超えた部分を給与」として加算します。
通勤手当の非課税限度額 ※ 新幹線を利用した場合の運賃等も含まれますが、グリーン料金は含まれません。
マイカーなどで通勤している人の非課税限度額
② 給与の額から「社会保険料」を引いた後の額が課税対象となります。
給与 + ( 通勤手当 - 通勤手当の非課税限度額 ) - 社会保険料 = 源泉所得税の課税対象 |
■上図の算式で算定した額を「源泉徴収税額表」に当てはめて控除する源泉所得税等の金額を決定します。
この税額表には「月額表」と「日額表」があります。
さらに月額表には「甲欄」「乙欄」、日額表には「甲欄」「乙欄」「丙欄」という区分があります。
■用語の意味
・「月額表」を適用する場合→通常の月給、日給月給、10日ごとや半月ごとに支払う場合など
・「日額表」を適用する場合→通常の日給、週給、入社・退職時に月給者に日割計算で支払う場合など
・「甲 欄」→会社に「給与所得者の扶養控除等申告書」の提出がある場合
・「乙 欄」→会社に上記の申告書の提出がない場合や2箇所以上から給与の支払を受けている場合
・「丙 欄」→アルバイトなど日給や時間給で給与が計算され、雇用契約期間が2ヶ月以内の場合
■事例…給与350,000円、通勤手当1,000円、社会保険料合計53,559円
扶養親族等2人
給与 350,000円 - 社会保険料 53,559円 = 課税対象額 296,441円
左欄から296,441円が含まれる行と扶養親族2人の列が交わるところに記載されている5,010円を給与から引くことになります。
296,441円 - 源泉所得税 5,010円 = 手取り額 292,431円
そのため手取り額は292,431円となります。
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